ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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混沌とした澱んだ意識の中、

何かのざわめきがあたしを喚んだ。


ふわりとした浮遊感。

ゆらゆら揺らいであたしは――



視界に、ぼんやりとした影が映る。



端正な顔の、漆黒の瞳。

精悍な顔の、褐色の瞳。

端麗な顔の、鳶色の瞳。



不安げな顔。

憔悴しきった顔。



「「「大丈夫か!?」」」



三者三様の声音が、見事に重なる。



彼らが背にしているのは、

見慣れたマンションの薄暗い天井。



ああ――

あたし、帰って来れたんだ。




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