ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├電脳オタクの失笑

 玲Side
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――玲、今動かせる紫堂の金はどれ程ある?


陽斗に見張り役を任せ、ひとまず自室に戻ろうとした時、僕の腕を引き留めた櫂が耳元で囁いた。


紫堂の金?


明らかに訝った顔を向けた僕に、櫂は少し考え込んだ後、僕の部屋に一緒に入ってきた。



――買収資金だ。



………。


成程ね。



僕とは違った形で考えていたわけだ。

そして櫂は櫂で、僕がしようとしていた方法が判ったのだろう。


お互いもう、長い付き合いだ。


2人でにやりと笑い合い、

そして僕はその作業を始めた。


出来るだけ迅速に。

出来るだけ穏便に。


そう今は。





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