ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




「誰だ、芹霞に酒を飲ませたのは!!!」




見上げると端麗な顔。


色素が薄い、白皙の王子様。


玲くんだ。玲くんもいる。


優しい玲くん。

綺麗な玲くん。

温かい玲くん。


玲くんにもぎゅうをしようとしたら、


「うわっ!?」


身体は傾き、玲くんごと尻餅をついた。


だけど痛くない。


不思議に思えば、あたしは玲くんの上に乗っていて。


あたしを見上げる鳶色の瞳と、視線がぶつかった。


…………。



玲くんの温もりが、あたしの記憶を刺激して。


いつも微笑んでいた……

大好きだった温かい存在を彷彿させて。




――お母さん?




だけどお母さんは困った顔をして。


眉間に皺を寄せて。


あの頃みたいに手を広げてくれなくて。




――お母さん。


貴女の温もりが恋しいよ。




また、あの頃みたいに――


膝枕をしてよ。


優しく名前を呼んでよ。




ねえ――お母さん?







そんなことがあった喧騒の記憶は、次第に薄れ…

夢と共に消えゆくのみ…―――

――――――――

――――……

……

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