ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 


「例え御階堂の力を削がれても、

お前だけは渡さない」



どうして――

出ないんだあたしの声は!!


一言、"事実無根"と言葉が紡げれば、

この男の"汚い策略"だと騒げれば、



あたしはこんな茶番から逃げ出せるのに。

櫂を傷つけず、颯爽と立ち去れるのに。




「おめでとうございます!!!」

「結婚の時期はいつですか!!?」




涙で滲む視界の向こうに、

思い切りあたしは咆吼した。



お願い、あたしに声を返して。

誰か、心を伝達する術を教えて。



苛立ちと怒りとで頭が沸騰する。




うあああああああ!!!




意識が飛ぶ直前――



金色が天井に広がった気がしたけれど、

鮮やかな青色が突如金に滲んだ気がしたけれど、


それを確かめる間もなく。



あたしは…


「――…神崎!!!?

おい、神崎!!!?」



闇に埋もれた。

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