ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├飼い犬の煩悶

煌Side
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それなりに、修羅場慣れしていると思っていた俺は、明瞭となる光景に愕然とした。


視界を埋め尽くす――

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の群れ。


真紅色に染まった…かろうじて人型を持つ肉塊の外貌は、少女の姿だけではなく、男も子供も老人も混在しているみてえだ。


混沌。


その数は100や200規模のもんじゃねえ。


1,000や2,000は軽く居る気がする。


眺めている内にも数は増えていて、氷皇が言った桁違いの数字も現実化しそうで、俺は舌打ちをする。


血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)がどの程度の来襲で仲間を増やせるのかは知らねえけれど、それでも肉塊の損失程度を見るからには、生温い攻撃じゃねえことはすぐ判る。


凶悪の気は伝播して拡がっている。


以前、芹霞と櫂と見た…話題のホラー映画。


街の市民が集団ゾンビ化して襲いかかる、あまりにもありえねえ設定に、恐怖に震えた芹霞をからかって平手を受けてしまったその設定に……、今まさに俺が取り込まれている。


呪詛たる血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の大群に、以前のように櫂も玲もぶっ倒れていないのは、玲の守護石の結界のおかげか、遠坂の腕のおかげか。


それでも時間が立つにつれて、状況は思わしくない方へ傾くと判っていればこそ、身体に緊張が走ってしまう。


櫂と玲が無事でいる為には、俺と桜が何とかしないといけない。


俺の手には偃月刀。


握る腕は完治してはいないけれど。


だけど俺は櫂を護る為に。

そして芹霞を見つける為に。


腕を吹き飛ばしても闘わねえといけねえ。


それでも――

そんな闘い方にぞくぞくするのは何故なんだろう。


俺が制裁者(アリス)だったからなのか。


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