ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


 
噛み付くようなその口付けに、

あたしは煌の胸をどんどん叩いた。


「んんんッ、んんんんッッ!!!」


やめて、やめて!!


あんたは今、まともじゃないッッ!!


だけどあたしの声は言葉にならず。


角度を変えて降り注ぐその唇に。

顔中に降り注ぐ、熱い煌の息に。

あたしは溺れそうになっていく。


苦しい。


呼吸が出来ない。


酸素を求めて唇を少し開けば、間髪入れずに煌の舌がねじ込んでくる。


その存在を主張して、あたしの全てを支配しようと暴れる。


「うっ……んんっ……はぁっ…や…こ……う」


卑猥な粘着音と唾液が奏でる淫蕩な世界で、心ならずも鼻にかかったような甘い吐息が漏れてくる。


そんな淫靡な行為に翻弄されても、冷静な心はまだ何とか在った。


口腔内を侵すその巧みで異質な感触に、これ以上の勝手は許さないと、あたしは必死に抵抗した。


歯で防御しても、煌の舌がこじ開ける。


舌と舌が絡み合う。


それは睦み合うというより、闘いで。


煌と――

そしてあたしの"陶酔感"との攻防戦。


粘着音の艶めかしさに、

あたしは気を失いそうになる。


どうにかして煌を正気に戻したくて。


断固拒否の姿勢で、煌の胸を叩いた腕は、煌によってしっかりと上から掴まれ、そして煌はあたしの両手の平に指を絡ませていく。


いわゆる恋人繋ぎというもので。


あたし達はより一層深く絡み合う。




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