ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




"今そうなっている"


その含みある言い方に、


「…… 隼人さん、どうかされたんですか?」


そう聞くと、マモルは声を潜めて言った。


「最近調子悪そうにしてたんだけどよ、今日体育で急に倒れて意識不明。隼人、結構あの女にびびってたから、精神的のものなのか、風邪拗(こじ)らせただけなのか。最近風邪が流行っているのか、休みも多かったしな。

呪いなら容赦ねえよ、あの女。由紀とだって仲良かったはずなのに。なあ、実?」


「ああ、確か両親は海外滞在、家にはあの女1人。しかも養女で、生き別れた『ヒカゲミツル』っていう弟がいるとか……由紀があいつと仲良かった去年始め、可哀想とか本当に心配してたんだよ」


実は、遠い目をしながら呟いた。


その時、実の携帯のアラームがなった。


「悪い、桜ちゃん。もうそろそろ学校行かないと俺達やばい。本当はサボりたいけど、現国出ないと教師がうるせーんだ」


そして帰り際、実が言った。


「あの女、最近は放課後や休み時間、電算室に篭っていたらしいぜ。その時携帯も開いてにやにや笑っていたらしい。あの電波女、お約束だよな、マジ超キモ……」 
    

2人の男子生徒は去っていった。


篠山亜利栖の交遊関係。

篠山亜利栖の生い立ち。


とりあえずは、紫堂が知りえた情報を一度無に返した方がいい。

生の声と違いすぎる。


公的な書類は、『実子』なのに彼女が『養女』と言っていた理由。 


公のものを改竄出来るとなれば、かなりの大きい組織が背景にいるのか。


そして桐夏にいるかも知れない、弟。


『ヒカゲミツル』


人伝で、初めてその存在が知れたとは。


篠山亜利栖が養女で、篠山家に入ったというのなら。


本当の苗字は――


「ヒカゲ……?」


私は…目を細め、

膝に居るテディベアを抱きしめた。



「まさか…あの、緋影?」



なんだかとても――

嫌な予感がした。
< 75 / 974 >

この作品をシェア

pagetop