ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



♪キーンコーンカーンコーン


1時限目が終わった合図。

芹霞に会いに行くのは恒例だ。


――ははは。本当に一途で健気だよね、僕の従弟は。


話を聞いただけで、玲は笑うけれど。


ここまでして、俺は見せ付けている。

公然としている。


芹霞にしか興味がないことを。

それなのに。


――また来たの、あんた!!? 特進科と交流しなさいよ!!

――なんで移動教室、わざわざ普通科のもの使うの、特進科!!! 視聴覚室だって音楽室だって…凄いってパンフに紹介されてたじゃん!! こっちはボロだよ、ボロ!!!


何で追っ払おうとするんだよ。

いい加減、意味に気づけ。


――判った。櫂の寂しがり屋は健在なんだね。ふふふ、可愛い。


いらぬ記憶を呼び起こすな。

8年前以前の俺の姿は、忘れろ。


と――…

いらぬことを怒鳴る羽目になる。


怒鳴れば悲しげな芹霞を見る羽目になる。


要するに――

今の俺は、昔よりも意識されていない。


絶対、意識させてやる!!


いつものように、"監視"を兼ねて普通科を訪れた休み時間。


「は!?」



―― 誰も居なかった。
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