ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



誰の目にもお前を映させたくない。

お前の目に、俺以外を映したくない。


俺だけのことを考え、

俺の為だけに生きるようにしたい。


昔よりも更に膨れ上がる、この狂おしい程の感情は…なぜお前には届かない?

 
――裏切り者ッッッ!!

――……櫂、行けってんの、聞こえなかったのか?

――真剣に…愛してる



嫌だ。


他の男に寄り添うお前の未来など、絶対認めない。



牽制したのに。


ずっと牽制して…

俺のものだと宣言してきたのに。




苦しい。


身体が壊れそうだ。




――約束します、父上。




あの誓約がなければと、

何度も何度もそう思ってきたけれど。



もし俺が、はっきりと心を告げていたら。

もし俺が、もっと判りやすい行動であいつに愛を示したら。



本当に芹霞は俺のものになっていたか?



猜疑心は渦巻き――…

不安と絶望ばかりが心を占める。



俺は自惚れ過ぎていたんじゃないか?

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