ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「……芹霞に、知らせる気かよ?」


煌が2人に訊いた。


「俺は知らせずにいるつもりだったが……今回の件で、藤姫が俺の血染め石を欲しているのなら、芹霞の耳にも入るはずだ……」


――坊、腹を括れよ?


 
「大体、何であの女、8年前のことを今蒸し返して動き出したんだよ」


緋狭様が言う。


「8年前、生ける屍の研究と制裁者(アリス)の施設を潰した私に、藤姫は烈火の如く憤慨した。利き腕と五皇の地位だけでは怒り自体は収まらず、坊が玲を負かした後も、他四皇全てを紫堂に差し向け、妹と坊を含む紫堂そのものを滅ぼそうとした」


櫂様の怜悧な瞳は、微かな驚きの色を浮かべて緋狭様を見つめていた。


「藤姫の手に渡った血染め石は私が破壊したようなものだ。

だが血染め石はもう1つ、芹霞の中にある。

そこで紫堂の当主が提案した。坊の命尽きれば、芹霞の中の血染め石の効果も消えよう。ならば、坊を使い、育った血染め石を何れ使えば、藤姫の玩具は今まで以上の性能を持って復活出来ると」


「ご当主が、そんなことを……?」


育った血染め石を使うということは、即ち芹霞さんの命がなくなるということ。


それを、紫堂を護る為とはいえ勝手に……。


藤姫は了承したというのか。


それが表向き――

紅皇との休戦協定として。


そして私達は、藤姫を元老院唯一の良心と認識していたといのか。


何たること!!!


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