ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


ああ僕が。


母の言葉に縛られずに、

昔の櫂のように弱り切っていれば。


そして芹霞に出会っていれば。


僕は、櫂のように愛されたんだろうか。


僕が櫂のように…

全てを変えて芹霞だけを欲していれば、芹霞は僕の芹霞になっていたんだろうか。


錯綜する僕の想い。


そんな自分勝手な想いを抱えながらも、

泣き続ける芹霞が切なくてたまらなくて。


こんな顔をさせたい為に、

こんな気持ちにさせたい為に、


僕も櫂も…黙していたわけじゃない。


芹霞の笑顔が眩しかった。


何処までも…

僕達の闇に照らしつける、君の強さが眩しくて。


だから、君に恋焦がれて。


君は間違いなく生きている。

僕達以上に、生きる意味を知っている。


ああ…だから――

闇に還るなんて言わないでくれ。


どうしても辛いというのなら。

どうしてもこの世界が嫌だというのなら。


その時、僕も――…。




そんな時――始まったんだ。





由香ちゃんが見つけたプログラムの穴。


対象を指定するコードを見つけてくれたことを、あのパスワードの影で伝えてくれた。


ただ、それを軸に膨大なプログラムが組まれているから、そう簡単に瞬時変更は出来ないらしい。


対象を変えてしまえば、呪詛は櫂には向かない。



変えるとするなら――



――…僕の名前だ。




その刻印の代償が、始まった。



< 870 / 974 >

この作品をシェア

pagetop