ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


緋狭さん――。


貴方は、芹霞を誰にやりたいの?


どうして"僕"を助けるの?


我慢ばかりする僕に…

よく貴方は悲しそうに笑っていた。


そうさせたのは自分とばかりに。


貴方は、元老院に近い立場でありながら、貴方が止められない元老院のせいで、力に頼り切る紫堂を憂えていたのでしょう?


貴方は人情派だから。


芹霞を僕に引き合わせたのは、貴方なのですか?



それならもっと早く…

櫂よりも早く引き合わせて欲しかった。


そうしたら僕は、芹霞に余所見をさせる隙など作らないのに。


虎視眈々と芹霞を狙う…

僕のような最低な男を近づけさせはしなかった。



「ぎゃはははははは!」



可笑しくて仕方が無い。




また――陽斗か。



「芹霞ちゃん、俺の名を呼べよ?」



陽斗の持つ緊急手当用のパッチは、病院でも使用されている即効性のあるものを更に改良したものだ。


そして。


あの時のように僕の力が"回復"に向けられた状態で使用すれば、心臓病の僕には発作から解放されるありがたい代物。


ああやはり。


芹霞は陽斗からパッチを受け取り、僕に貼り付けるのか。


そして"僕"は喜んで――

自然と"回復"モードにしてそれを受け入れるのか。



僕は。

"僕"は。



死にたくない。



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