青空、ハレの日☆奇跡の条件(加筆修正中)
「まっ、いっか! アタシの勝利ってことで!」

「いや、よくないから」

 仙太が即座に返した。すると空兎はプゥと顔を膨らませて、さらに返してきた。

「いいじゃん! アタシの蹴り一発で相手はKO! どっからどーみてもアタシの勝ちなの!!わかった?!」

 やや早口で巻くしたてる空兎の迫力に仙太は、やや押されながらも指である方向を指す。
 それはサングラス男とそれに捕われていたままの女性店員だ。

 空兎はその姿を見るなり、目を丸くし、額から汗を流し始めた。

「えっと・・・・・・」

 黙考するも、それを数秒で放棄した空兎は開き直ったのか、サングラス男に指を差し、強気に挑発した。

「その人撃ったら、アンタもこうよ!」

 またそんな相手を刺激するようなことを、仙太は内心焦ったが、意外にもサングラス男の反応は仙太の危惧していたようなものではなかった。

 むしろ小さく笑っている。

「ははっ・・・・・・面白い奴だ。いや、心配するな、俺は何もしない。・・・・・・それにそろそろ俺は退散する」

 そう答えた直後、外からパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
 サングラス男は、女性店員を男性店員の方へと突き飛ばすと、自分は裏口から逃走していった。
 その様は実に落ち着いており、『仲間がやられ、計画外の事態になったことで逃げた』ということではないように仙太には見えた。

「まるで始めから逃げるつもりみたいだったな・・・・・・」

 自らが予想していた立て籠もるといった想定は考え過ぎだったのか……。

 ともあれ事件は犯人が逃走という形で幕を閉じた。

 尊い犠牲者は出てしまったが・・・・・・。
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