− 夏色模様 −




「はい、先輩、着きました」


庭に着いてしまった。


「なにか気になるようなら、夜に俺の部屋に来てくださいよっ。 俺の部屋は、階段の近くなんでっ!

…… それじゃっ!」


「あっ! ちょっとッッ!」


誰も“行く”だなんて、言っていないのに……。


名前も知らない“彼”は、颯爽と消えていった。


さすが、バスケ部。 いっくんと陽太くんもそうだけど、やっぱり足が早い。

うらやましいくらいだ。


「まー、いっか」


あとで体育館に行ったときに、優ちゃんか陽太くんにでも誰か聞こう。

それで、部屋に行くのは断ろう。


“男はみんな、狼だ!”


いっくんにもそう言われているし、他人の部屋に行く事もダメっぽいし……。

早くタオルを干そうっ!


「んーっっ! 頑張ろう」


腕を空に向かって、大きく上げた―――。




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