− 夏色模様 −

2日目⇒ 逃走。





西村くんがいつ、いなくなったのかは、わからない。

でも、今のあたしはいっくんや優ちゃんの傍に居たくないから。


「あたしっ、平本先生の所に行ってくるね。 ごめん……。 あと、よろしく」


“逃げる”しか、残っていない。


「まおっ!」


いっくんがあたしの名前を後ろから呼んでいるけど……。 あたしは振り向かない。


振り向いたら……。 絶対に、泣いてしまう。


ただ、ひたすら走る。



「まおっ!」


でも、やっぱりいっくんには敵わない。


「逃げるな……」


腕を捕まれて、前に進むことができない。


「やめて……。 離して」


「離さねーよっ。 まおっ、俺の方を見ろっ」


いやだ、見たくない。

今は、一人にしてよ……。


いっくんの言葉を素直に聞き入れることが、できない。




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