− 夏色模様 −

4日目⇒ 素直にアナタと、向き合う。





帰りのバスに乗り込む、30分前。


今日は半日、自由時間。


もちろん、前田先輩と木下先輩は仲良く二人で出かけて行った。


「なんて言うか……」


“謝る”と、決めたはいいが…… なんて切り出していいか、全くわからない。


こういうとき、タイミングよく前田先輩が現れてくれたら―――。 なんて、考えてしま……。


「――― !」


「……」


相手も俺に気づき、手に持っている“黒い財布”が、強く握られた。


「どもっす」


小さく頭を下げた。

ここは自販機前。 きっと前田先輩は、飲み物を買いに来たんだろう。


「……」


相当根に持っているのか、挨拶すらしてもらえない。 想定内と言ったら、想定内だが。


「昨日は、すいませんでした!」


両手を指先まで伸ばし、前田先輩に向かって、頭を深く下げた。


伝えなくてはいけないことは、きちんと伝える。


「俺、何も知りませんでした」




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