− 夏色模様 −




庭に向かって、走り出す。 せっかくもらえたチャンスだ。 無駄にするわけには、いかない。


頭にタオルを乗せ、日陰のベンチに座る木下先輩を見付けた。


「木下先輩っ!」


「――― !」


俺が呼び掛けたのが相当驚いたのか、振り向いた木下先輩の目が大きく見開いていた。


そんな姿も、カワイイと思う俺は相当重症だと思う。


「隣、いいですか?」


右半分が空いていた。

小さくコクリと頷き、許可が下りた。

俺は“おじゃまします”と、小さく言い隣に座った。 …… さて、何から話そうか。


「……」


「……」


それは、無言から始まった。


タイムリミットは、10分間。




< 268 / 300 >

この作品をシェア

pagetop