夜獣3-Sleeping Land-
「デート?」

プレーンヨーグルトを口にしながら、アキラが玄関で出迎える形となった。

僕はアキラを無視して、横を通り過ぎて自室に向おうとする。

「あいつ、何でいつも不機嫌なの?」

後から家に入った渚に、疑問をぶつける。

「耕一さんは、いつもあの方の事を考えているからです」

「あの方?」

後一歩で、渚が全てを話してしまう。

「渚、余計な事は喋るな」

「すいません」

渚の語り癖を制して、自室に戻った。

ベッドに座り、今日の事を振り返る。

桜子にも、関わりを持った能力者が現れた。

何の因果か。

脳裏に、能力者と関わってきた人間の末路が浮かび上がる。

僕が、少しでも柏木家に近づいたからか?

負の糸は切れぬまま、繋ぎとめられているというのか。

夕子の妹。

「犠牲に、なるのか?」

心臓の鼓動が速くなる。

松任谷を倒すために、動くべきなのか?

それとも、別の能力者を探すべきなのか?

「はは」

何を、迷っているんだ。

僕は、実の姉を犠牲にした男だ。

自分が強くなるためだけに人殺しまで行った馬鹿が、何を言ってるんだ。

もう、遅いんだ。

闘うしかないんだ。
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