腐っても探偵。されども探偵。そもそも探偵ってなんだ?
そんな純の心境を知ってか知らずか、目の前の男はニコニコと笑いながら名刺らしきものをを手渡してきた。


「初めまして。僕、こうゆう者なんだけど」


咄嗟に受け取ってしまい、その名刺と男を交互に見る。


「……あま…みや……いづる、さん?」

「うん、そう」


いやいや、うんそうってあなた。


「あ、あの……見間違いでなければ……探偵とか書いてあるんですけど…」

「うん?見間違いじゃないよ?君、もしかして目ぇ悪い?」

「………」


――ダッ!


「ちょっとちょっと、どうして逃げるのさ」

「っ…逃げますよ!」


脱兎の如く駆け出そうしたと純を、天宮泉流と名乗った男が力強く引き留めた。

強く掴まれた腕を必死に振りほどこうとする純だが、パッと見細く見える男のどこにそんな力が潜んでいるのか、びくともしない。
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