恋を、拳と共に

茜 3


何本目かのダッシュを終えて、私は考えた。
うーん。二歩目の時の足を、もうちょっと前に出すようにしないとだめかな。

次こそやってみよう、と思って顔を上げた時、トラックの外側を走ってくる集団が見えた。
その中のひとりと、目が合った。


秦野くんだった。

珍しいなー。今日は、バレー部は外で練習なのかな。
大会も近いんだろうし、基礎体力は大事だもんね。


――秦野くんも、がんばれー。

――ファイトっ。


声を出さずに、両方の拳を胸の前でぐっと握って、心の中でちょっと応援しておいた。



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