Iの漂流戦士





『修さん……。やらなかったんですか?それとも、やれなかったんですか?』


おもむろに一馬が語りかけた

修は驚いたように振り向くが、すぐ何かに勘づいたようだ


『お前だったのか。あの人を赤磐市に呼んだのは』


ため息をつき、修が月を背にして寄り掛かった


『確かに今夜殺人が起こると教えたのは僕ですけど、修さんと鉢合わせになったのは偶然ですよ』


そう、修と正義が鉢(はち)合わせになる事まで、一馬が計画できる訳がない

偶然と言ってしまえばそうだけど、一馬は分かっていた


正義なら必ず修に会う事が出来ると、確信はないけれど一馬はそう感じていた



『……?なんの話し?』

その間、ナノハが首を傾げ興味津々だった


『ナノハさんはどっちだと思いますか?』

話しの主旨(しゅし)を説明しないまま、一馬はナノハに聞いた


ナノハは深く突っ込む事はせず、即答で答えた


『修はやると決めたら絶対にやるよ?』


『って事は……修さんは“やれなかった”って事になりますけど、合ってますか?』


一馬はナノハの返答をそのまま修にぶつけた

修は怒る事なく『さぁね』と流した

再び、二人に背を向けて月を見始めた修は言う



『なぁ、お前はどうゆうつもりであの人と俺を会わせたの?』

その質問は勿論、一馬に向けて言ったもの


一馬はいつものように、またパソコンを開きながら言った


『会って、修さんがどんな決断をするのか見たかったからです』






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