「あなたのライバル派遣します!」


「危なかったですね」

 英が何やら細かい字でびっしりと埋まっているA4タイプの紙の束をぺらぺらと捲りながら、隣でメガネを外して眉間を指で揉んでいる上司に告げた。

「しっかし、こんな偶然ってあるんっすね」

 メガネをかけなおしながら、自分を囲むように立っている二人の部下を睥睨(へいげい)すると低い声を出した。

「プログラム変更だ」

 小太りな小男は、そんな上司の変化を気にするわけでもなくいつものように嬉々としてキーボードを高速タイピングし始めた。

長身痩躯の男は、軽く肩を竦めるとカプセルの横に陣取り小型モニターとノートパソコンに交互に視線を動かしながら、小男と同じようにパチパチとキーボードを打ち始める。

 二人に指示を出した男は、再びメガネを外すと眉間を指で揉みながら椅子に背を預けて大きくのけぞると隠すことが出来ないほどの深いため息をついた。
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