「あなたのライバル派遣します！」
　緩んで仕方がない口元を先ほどと同じように手で隠しながら、その視線を横へと滑らせていった。

そこで、竜馬の表情が凍りつく。

　視線で釘でも刺しているかのように、竜馬はその場からもその文字からも動けなくなってしまっていた。


1位　倭　健


　そこには確かにそう書いてあった。

　竜馬の頭の中は、真っ白になり何も考えられなくなった。

今回は、かなり自信があった。

前回は、健より一つ順位が上というだけだったが、今回はかなり引き離せたのではないかと密かに思っていたのだ。

それがどうだろう？　逆に、健にかなり引き離されてしまっていた。

「よっ、竜馬」

　いつの間にか竜馬の周りにはほとんど人がいなくなっていた。

もうすぐ始業のチャイムが鳴る時間なので、それも頷ける。

普段の竜馬だったら、授業に遅れることなど考えられないことなので、どれだけ竜馬の心がここにあらずという状態だったのかが窺える。

　そして、そんな竜馬の背中を遠慮もなく叩く者がいた。

無防備すぎる状態だった竜馬は、その背後からの殴打に数歩前のめりになるようによろけるとやっと我に返った。

　痛さに顔をしかめつつ振り替えれば、夏もとうに過ぎたというのに相変わらずの日の光をたっぷり浴びたようなヒマワリスマイルに迎えられた。

「健……」

「どうしたんだよ？　なんか俺の顔についてるか？」
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