「あなたのライバル派遣します！」
　横からは、珍しく遠慮がちな声がかかる。

その声で、我に返った竜馬はぎこちない笑顔ではあったが、どうにか健に向けることが出来た。

「その、良かったな健」

「……ありがとう」

　竜馬は、健のその短い言葉になぜだか救われた気がした。

もしここで、健に慰めの言葉などかけられていたら自分がどういう行動をとっていたのか予測がつかなかった。

改めて、友人の顔を見るといつもの日の光たっぷり浴びたヒマワリではなく、日陰でも懸命に太陽を目指すヒマワリのような強い笑顔を浮かべていた。

　竜馬はこのとき、朱莉に告白するという目標を一瞬忘れた。

ただ、この目の前の男を追い抜きたいという純粋な願望に支配されていた。

「健。次は絶対に負けない」

　いつにない竜馬の気迫に一瞬虚をつかれたような顔をした健だったが、すぐにいつもの笑顔を顔に浮かべると大きく頷いた。

「ああ、俺も負けないぜ」

　そこでちょうど、始業のチャイムが鳴り響いた。

二人顔を合わせると、同時に足を動かし走り出す。

それと同時に、鳥が羽ばたくような音も聞こえた。

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表紙・目次

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