哀・らぶ・優
――ピンポーン
不意に鳴ったインターホン。

「真一…?」

慌ててドアの鍵を外す。
溢れてたものを拭って、笑顔を作る。
おそらく真っ赤であろう目を見られたら、泣いてたとバレるかもしれない。
でも、それはそれでいい。
真一のせいよ、って可愛く言ってやろう。

ドアが開くまでの一瞬でそんなことを思った。

でも…無意味な妄想だ。


『暇だからきてやったよ。』

ドアを開けたのはユキトだった。
落胆のため息をつきそうになる。

「呼んでないし。」

心配してくれてるのは痛いほど分かる。
それはとても嬉しいことだ。

だけど…だけど。
だけど、あたしが待ってるのは
ドアを開けてほしいのは。
ごめん、君じゃない。

あたしの家まで歩いて来れる距離に住んでるユキト。
優しくて、面白くて、男前なユキト。
多分、あたしを好きなユキト。

君の事好きになれたらとても幸せなんだと思う。

でもやっぱり、君じゃない。


ユキトは哀しそうに笑って
まぁ何かあったらいつでも呼べよ
と言って帰っていった。

再び訪れた無音と、ユキトと話しても消えなかった孤独。
時計の針はゆっくりゆっくり、でも確実に進んでいく。



そして、また夜が明けていく――




   #5 end.
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