遙か彼方



2人の視線がやけに痛い。


でも私にはどうすることも出来ない。

何かを言わなければ、なんて気がしない。

ただこの時間が早く終われと思う。



………酷いかもしれないけど、佐山さんに早く帰って欲しかった。

私の居場所に居て欲しくない。



「大丈夫らしいんで、今は一人にしてあげましょう」

そう言ったのは彼だった。


私、一人にされるの…?


「…そうだね。じゃあ美桜ちゃん、またね?」

「……はい」


優しくしてくれた佐山さんに酷いことを思った罰かな。

一人にはなりたくない。

彼には行かないで欲しい。


私はなんて我が儘なんだろう…。

最低で我が儘。


そうは思うけど、立ち上がった彼の背中を“行かないで”と見つめてしまう。

振り向いた彼が困惑気味に微笑む。

佐山さんが居る手前、彼にだけ行かないでなんて言えない。

でも、行かないで…。






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