遙か彼方


何度も「好き」と繰り返す彼に私も何度も頷いた。

声を出したら震えた声が出る気がして、私は頭だけを縦に揺らした。



「美桜」

「……」

「さっきの続き聞かせて?」


さっきの続きって何だろう?

何か言いかけてたっけ……、あぁ。


「僕のこと、何?」


さっき彼に遮られたことだ。

今日私が彼に一番伝えたかったことだ。



私は顔を上げた。


「私、葵のこと──」


目の前には異常に白い肌とライオンの鬣(タテガミ)みたいな白金の髪の毛、そして穏やかに細められた金色の瞳。



「大好き」




夜空の雲が晴れていく。

彼の頭の後ろに丸い月が顔を出す。

周りのヒマワリが月の光に照らされる。

彼の髪も月の光でキラキラと光る。



だけど、私はそれらに気がつかなかった。




迫りくる彼の顔で視界を覆われる。


唇が触れる手前で私は自ら視界を遮断した。




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