遙か彼方



寮に来て5日後、私がご飯の時以外部屋から出ないのを見かねて、寮母さんが暇潰しに良いと大学の図書館を教えてくれた。


大学の図書館といっても、出入りは自由らしい。

最近まで中学に通っていた私には考えられないことだった。



部屋に居たら考えたくないことまで考えてしまう。

もう、考えたくなかった。


読書に没頭すれば考えなくて済むかもしれない。




私は寮に大学生があまり居ない時間を見計らって部屋を脱け出した。



教えて貰った図書館は大学のいくつかある建物の中でも一番奥にあって、古ぼけた大きな建物だった。


そこまで辿り着くのに、色んな人とすれ違った。

医療大学の付属の病院ということもあって、辺りは一般の人たちが沢山居る。

そのせいか寮と違って痛い視線は向けられなかった。



図書館はコンクリートの階段を数段上がると扉がある。



でもこの扉を開けたら、また寮に居る時のような目で見られるんじゃないか。

ここまで来ておいてそんな考えが浮かんだ。


でもここも逃げてしまえば、後はやっぱり部屋に引きこもるだけ。

せっかく寮母さんが教えてくれたんだし……。



中に入ったら誰とも目を合わせないで、本棚に隠れればいいか。

意を決して私は重たい扉を開けた──。






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