遙か彼方



だから私は図書館に逃げる。

誰にも気を使わなくていい。

誰に痛い目で見られることもない。


正に一人だけの空間だった。




朝ご飯を食べ終えると寮生が大学に行った後、図書館に向かう。


コンクリートの階段を上がって重たい扉を開ければ、中は冷房が効いていて寒いくらいの空気に一瞬鳥肌が立つ。


4ヶ月間毎日通っているのに司書の人と仲良くなることはない。


それは私が一度も本を借りたことがないから。

借りなくてもここで読めばいい。

だから司書の人と話したことは一度もない。



ここの本を寮の部屋で読む気はしなかった。

寮と図書館を混同したくないから。

図書館の本を寮に持って帰ったことで、その借りた本を図書館で見つける度に寮を思い出してしまうことが嫌なんだ。


逃げ場所でまで現実を思い出したくはない。

だから本は借りない。





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