遙か彼方



彼は開いている窓から身を乗り出しているらしい。

“らしい”というのは、彼がカーテンの向こう側に居るから。

私からは後ろ向きの足しか見えない。



「覚悟は出来た?」

私が近付いて行くとカーテンの向こうから声がした。

「……うん」

実際ドキドキは治まらないし、不安も無くならない。

それでも私は、彼のことが知りたい。

私が彼について知っていることとは何だろう。

肌の白さ。

声の透き通った感じ。

……………。

速読?


たいしたことは知らないんだ。

というか、何も知らない。

だから知りたい。




「美桜、僕のこと、嫌いにならないでほしい……」


突然の彼の声、それは凄く悲しそうな声だった。

私の胸が締め付けられる程に。






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