王龍
「…」


うちは、気付けば走りだしていた


「凪瑠っ!?」


「凪瑠さんっ!?」


「凪瑠ちゃんっ!?」


そんな声、今は聞こえへん


うちは、みんなを守らなあかんねん


だって、うち…総長やで?


「…待ってて」


さっき出ていく時にとった紙袋


これがどういう意味を示すのか


それは、殆どの人が知らん


ただ、その意味を知ってる蓮は…


うちが紙袋をとったことに気付かんかった………


今、きっとあの頃から止まりっぱなしだったうちの時間が、進みだしたんや…





「和くんっ!」


王龍メンバーと、柏木組組員の戦闘でごったがえす運動場をかき分け、和くんのもとへ走る


「…よぉ姫。…大丈夫か?」


「…馬鹿っ!分かってるでしょ?アイツがどういう人間か」


「…おぅ。…俺らを怒らせた人間や」


「…ちがっ」


「姫。その紙袋………」


「………」


「馬鹿なことはよせ。それは一番守らなあかん約束やで?」


「…分かってる。…でも、もううち…決めたから」


「…凪瑠ちゃん。こいつら馬鹿だよねぇ」


「…おじさん…」


「…死んだ糞ガキの二の舞だよぉ?アハハハハッ」


…死んだ…糞ガキ…?


「…死んだんじゃなくて、殺したんでしょ」


「…どっちも一緒だよぉ。…あんな糞ガキは死んで当たり前だったんだよ!アハハハハッ」


…楓


あなたは、死んで当たり前だったの…?





生きてて当たり前なのよ…?


ねぇ?


楓…………………





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