王龍
あらゆるところが刃物か何かで、えぐられ、血がドロドロと流れでていたから、だ


奥には同じようにえぐられた、父の姿も見える


幼かったうちには、衝撃が強すぎた


いや、幼くなくても…大人になっても、この衝撃には耐えられないだろう


声にならない叫びをあげ、逃げるように家の外に出た


「…凪瑠ちゃんっ!?」


運良く家の目の前を通っていた近所のおばさん


そのおばさんは凪瑠の姿を見て、驚愕した


顔は真っ青で、冬にもかかわらず、汗がだらだらながれている


それになにより、ここは外なのに裸足、しかもなぜか泣いている


一目で何かあったとわかる


「凪瑠ちゃん、どうしたの?」


泣きじゃくる凪瑠を、そのおばさんは抱き寄せ、よしよし、と言って慰めようとした


「ままがぁ…ぱぱがぁ……」


「ママとパパがどうしたの?」


「…ふぇっ………ぐすっ」


おばさんの質問にも答えようとしない


「パパとママ、今お家にいるの?」


「…うん」


小さく頷いた凪瑠を見て、おばさんは意を決したように、家の中に入った


「…おじゃまします」


凪瑠は一人になるのが嫌なのか、おばさんに必死に抱きついている


「…パパとママ………どこ?」


「………こっち」


凪瑠が指差した方向に進むにつれ、気のせいだろうか?


嫌なにおいがする


「…ここ」


そう言われて入ったところは、リビングだった





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