世の中の
なずな



翔がプリントを読んでいる間、1つの動きがあった。

と、いっても別に、事態が急変するようなことではない、はず。


完成した別荘に、亦部夫妻が早速遊びにきたのだ。

如何にもお金持ちといった風貌をしており、少しこの島から浮いていた。


着いてすぐこの夫婦は別荘に入り、中を見て回ったりして過ごしていた。

すぐ外に殺気の込めた視線をおくる人影に気づかないまま。




―…

「…なるほど」

翔は納得したように顔をあげ、友也がいた方を見た

「あれ?」

案の定、友也はいなく、立ち入り禁止区域の森で、翔は一人、ポツンといた

―いない…!!
―どこっ!!?

翔はこういった場所には慣れていなかったため、ひどく動揺した

見慣れた場所なら別に友也がどこに行こうが構わなかったが

―友也が戻ったのは夜、真っ暗になった頃であった





「田中も来い!!」

仁たちは一旦立ち入り禁止区域の森を出て、田中の家へ行った。

「えー、何で俺が?」

「どーせこれもお前の遊びだろ?」

若干殺気を込めて仁は田中に言った。

「田中さん!!」

珍しく唯が人にさんを付けていた。

「仁も新ちゃんもあなたの手駒じゃないんだから!!」


「あー…唯ちゃんが言うならね」

「偉い!!」

「これ終わったら、デートしてくれる?」

「いいよ」


などと会話をしながら、仁たちは田中の家を出て、別荘に向かった。

行く途中、田中は仁たちに報告をした。

「あ、後もう二人…あ、三人かな?助っ人くるから」

と。

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