フェンス
凉は自分の言葉で香音の言っていたことを鮮明に思い出した。
『あんたなんか知らない。』
真奈は再び凉にナイフを向け突進してきた。
凉はなんとか後ずさりながら真奈が振りまわすナイフをよけているが、真奈に銃を向けようとはしなかった。
(きっと何か方法はあるはずだ。絶対元に戻してやるからな…真奈…)
凉はくるっと向きを変え上の階へ上がっていく。
真奈も凉を追いかけて上へと走っていった。
静かな階段に2人の足音―…
それは高校生活の中で頻繁にやっていた鬼ごっこのような仲の良い陽気な足音とは正反対の悲しく切ない足音だった。