オバケの駐在所
亡き人
誰……?

鳴り響く携帯の着信音。

うす暗い部屋の中、
ぼんやりとした
イルミネーションが光る。

カーテンの向こうは
わずかに白んでいた。

口元までかぶさっていた
羽毛布団から手を出すのも
わずらわしかったけど、
ほぼ無意識に携帯をとって
スライドさせた。

ハジメさん……。

電話じゃない、メールだ。

「はぁ」

……なんだろう、
こんな朝方に。

開いていた片目を再び閉じて
決定キーを連打。

感覚でメッセージを開いた。

『12時に迎えにいく』

……なんのこっちゃ。

ディスプレイの右上を見ると
5時と53分。

迎えにくる?学校に?
ああ、夜中のことか。

でもなんで?

気がつくと布団の外は
とても寒かった。

手。頭。それに足のすきま風。

寝る前に震えながら
寝床につくのは好きだけど、
あいにくの平日ってところが
玉にキズ。

それでも鳥の鳴き声や
朝の足音を聞いているうちに
時間がとても
ゆるやかなことに気づいた。

洗いたてのシーツが
気持ちよくって
私は目を閉じつつ
まどろむ世界にひたる。

夢見心地なんて
めったに形象として
あらわせられないけど
こういったことを言うのかな。

そんな事を考えながら私は
いつしか眠ったように……。

そう、眠るように
私は死んでいた。
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