オバケの駐在所
……ここに来ても
死んだ理由なんて
わからないか。

「おいおい、なつみ。
もう行くのか?
仲のいい友達がいんだろ?」

その場から去ろうとすると
手に持っていた唐傘から
舌っ足らずな
だみ声が聞こえてきた。

「いいの。……向こうからは
どうせ見えないし。
それより梅が咲くのかな?」

私は誰かが折った梅の枝を
ふと拾い上げて思う。

「ああ?それよりって
お前他人事かよ。
なんなら俺がみんなに
なつみの存在を
教えてやろうか?
なあに、気にするな。
俺も居候の身だし
これくらいはやらんとな」

「おせっかいだって。
あんたなんかが行ったら
みんな驚くどころか
見せ物小屋に
売り飛ばしちゃうよ」

ああ見えて
根性がすわってるのが
いるんだから。

ため息を漏らしながら
もう一度振り返ったら
明るく楽しそうに笑ってる
たまちゃんがいた。
合同授業だから
隣のクラスの
修二くんの姿も見える。

……それにこんな姿で
会いたくないもんね。

しかし唐傘は
そんな私の気なんて
おかまいなしに
梅の芽をむさぼることに
夢中になっていた。

「……おいしい?」

と、聞いてから
若干後悔する私。

「うめ〜」

顔がひきつりかけたけど
さすがの私も今日ばかりは
たしなめる気力もない。
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