夕暮れ色の君

関わる理由は…?



―――大好きだった、“あの人”。



そう、あの日の“あの人”も、今の蒼さんと同じように、あたしの腕を掴んだ。



あたしに、行かないで、というように。



…だけど。



あたしが、あの人の異変に気付いていながらも、あの人を置いて病室を出ていったから。



あの人は、一人で堕ちていってしまった。



…あたしの、せいだ。



何があっても、絶対にあの人の手を離しちゃ、いけなかった。


側にいてあげなきゃ、いけなかった。



それは、一番最後に“あの人”を見た、あたしの役目だったのに。



あたしはそれを果たすことさえ、できなかった。



できていたなら、“あの人”は今も隣で笑っていてくれたかもしれないのに。


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