夕暮れ色の君


この可哀想なはずの少年は、物語の最後で、こう述べている。



〝彼女が、どうか幸せでありますように〟



そんな、短いメッセージ。



少年が最期に遺す言葉はいくらでもあったはずなのに、

大和さんは、数知れず多くの言葉の中から、何故これを選びとったんだろう。



自分の不幸を、嘆く訳でもなく。

手紙を渡せなかったことを、悔やむ訳でもなく。

健康ではない体を、悲しむ訳でもなく。



…ただ、彼女の幸せを願った、少年。



きっと、悲しみは大きかった。

苦しみだって、大きかった。



でも、その悲しみや苦しみよりも上回ったのは、

おそらく彼女への深い愛だったのだろう。


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