夕暮れ色の君

見せた涙と誤魔化し



「考えて、しまうから」



初めに出てきたのは、そんな突拍子もない言葉。



口下手なあたしは、何て言葉を紡げばいいか分からず、つい、たどたどしくなる。



『…何を?』


「…苦しかったことを、思い出すんです」



簡潔で、要点のみのあたしの言葉。



蒼さんは、意味が分からない、と首を傾げているかもしれない。



「ハッピーエンドにならない話って、やっぱり最後は別れになってしまうものが多くて、」


「あたし、その別れにトラウマがあって…、」



頭に浮かぶのは、帰り際のあたしに見せた“あの人”の痛々しい笑顔。



時が経った今でも、あたしの記憶に鮮明に焼き付いている。



情けないけれど、思い出す度、泣いてしまいそうになる。


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