夕暮れ色の君

許してくれるなら



『…じゃあ、もうそろそろ帰らないと』



その言葉と同時に、あたしの頭から消えた、蒼さんの手のひらの暖かい温度。



蒼さんは、あたしに笑いかけた後、向きを変えて、帰路を急ぐ。



確かに、頭上には暗い空に星が瞬いているし、帰るには遅い時間。


…でも、



「蒼さん…っ」



何となく、今の蒼さんに何も声をかけずに、帰らせられないと思ったから。


あたしは、ぐっ、と蒼さんの腕を掴んだ。



『…? どうしたの?』


「あ…、」



咄嗟に何か話さないとの一心で、腕を掴んだのはいいけれど、何を言えばいいか分からない。



でも、このまま言わないと蒼さんは行ってしまう。



「蒼さんは、辛いことありますよね、」



考えた末に出てきた言葉はこれだった。


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