夕暮れ色の君

君には敵わない



…駅前の、バス停。



「送ってくれて、ありがとうございました」



あたしは、頭を下げてお礼を述べる。


同い年と分かっても、一回敬語を使い始めたら、定着してしまうものだ。



『いえいえー。あ、しーちゃん、ちょっと携帯出して?』


「え?…何で、ですか?」


『いいから。ほらっ』



蒼さんに促されて、あたしが鞄から携帯を取り出すと、

同じように蒼さんもポケットから携帯を取り出す。



これで、何をしようというんだろうか。



『うん、よし、そのままにしててね』



そう言った蒼さんは、蒼さんの携帯とあたしの携帯を重ね合わせて。


次の瞬間、ピ、という電子音が響いた。


< 63 / 85 >

この作品をシェア

pagetop