夕暮れ色の君


――パシャッ


『しーちゃんの笑ったかお撮れたっ』


「…!?ちょ、消して!」



いつも蒼のペースに振り回されながらも、

初めて出逢った時のように拒めないのは、



『だーめ。待ち受けにするんだから』



そう言って、ふわりと微笑む蒼の表情の中に、計り知れない優しさがあるから。


その優しさを、知ってしまったから。



「〜っ、蒼って、見かけによらず意地悪だ」


『しーちゃんだって。見かけ以上に中身も可愛いよね?』


「なっ…!」



そんなあたしに対して、全く言い返しにならない、お世辞を言うとことか。


あたしが真っ赤になるのを計算する意地悪な面も。



日が暮れる度に、蒼と逢う度に、知っていったこと。


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