儚花火
でも気付かないふりした。

だってせっかく獅兎と夏祭り行って花火見れるのに、暗い雰囲気なんて絶対にやだもん。


「あ、りんご飴!」

「食べるのか?」

「うんっ!」

子供だって思われてもいい。

とにかくあたしは獅兎といられる時間が楽しい。

だから、いつにもましてはしゃぎまくってた。

「ねぇ獅兎っ、アレ欲しいっ!取って!!」

「取ってって…あんまり簡単じゃないぞ、アレ」

あたしが指差してるのは、射的の景品のウサギのぬいぐるみ。

ちょっと大きめの。


―――パンッ

簡単じゃないとかいいながら一回分でしっかり取ってくれた獅兎。

「……簡単じゃん」

「お前の為ならな」

くしゃってあたしの頭を獅兎が撫でる。

せっかくセットした髪形が崩れるのも今は嬉しかった。


しかも周りの女の人はほとんど獅兎を振り返る。
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