儚花火
「あたしと獅兎の付き合いを認めてください」

「……」

お父さんは無言のままだった。


「あなた」

お父さんの視線があたしの後ろにいって、あたしも自然にそこに目を向ける。

「お母さん?」

あんまりこういうことに首をつっこまないお母さんが、珍しく自分から出てきた。

「認めてあげて下さいな」

お母さんはいつも長い言葉は喋らない。

ただ優しい笑顔で。

優しい声でしゃべりかける。

今日もいつもと同じ。

「……」

「この子、駆け落ちも本気でしますよ?」

そういう子ですから。

そう言ってほほ笑むお母さんの笑顔は悪戯なえ顔だった。
< 30 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop