茜ヶ久保マリネの若気の至り
動くに動けないまま、対峙したままの時間だけが過ぎる。

と。

「こちらから動いてやろうか?」

クラーケンが、ニィィィ…と表情を歪める。

次の瞬間、頭上で風切り音。

「っっ!」

反射的に私はその場を飛び退く。

その判断は正解だった。

「!!!!」

洞窟の天井を貫いて出現した茶褐色の触手状のものが、私の元いた場所に突き刺さったのだ!

長さ、太さ、大きさ共に、まるで巨大な生物の触手。

そしてその触手は地中を介して、どうやらクラーケンの尻辺りから伸びているようだった。

…しかし、あまりに大きさに差がありすぎる。

クラーケンの体と触手の大きさでは、バランスが取れていない。

あまりにも触手が大きすぎるのだ。

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