記憶 ―惑星の黙示録―


「生きる者にとって、心と体は二つでひとつ。その双方が離れようとする時、苦しみが生まれる…」

……ぇ?

リュウさんが言った言葉は、
風の中で聞いたアランの言葉。

何か…
ひっかかった。


「でも、リュウお兄ちゃん!この花畑に来れば元通り治るんでしょ!?」

「あぁ、本来の姿さ。あ、コンちゃんの言葉は通じる様にしてあるよ?アランのご希望で。」

それだけ…?

じゃあ…
じゃあ、どうして?


「だって、どうして!?」

ハルカちゃんは、
そう叫びながら私を見た。

多分、その疑問は私が感じている事と同じなんだと思う。


ワンッ!
『…どぉして、ナオは…「消えかけた」ままなのさッ!?』


そう…、
体は軽い。
透けたままの、私…


「生きる者にとって、心と体は二つでひとつ。体は、器。心とは、すなわち、魂…。」

魂…?

リュウさんは私の目をじっと見て、こう言った。


「…奈央ちゃん。この世界へ来た時から、…お前さんに『体』は、無いんだよ。」


体が、ない…


透けた体。
これが、今の私の…

本来の姿…


そう聞かされて…
心は、ぐらりと傾きかけた。

穏やかな、花の匂いのせい。
案外…平静を保てた。


< 151 / 262 >

この作品をシェア

pagetop