記憶 ―惑星の黙示録―


忘れていた記憶。
忘れようと閉じ込めた記憶。


事故の衝撃で黒猫の首輪から外れた、
私の手に握られたままの…、

愛里の猫の『銀色の鈴』。


混濁する意識の中で導き出した答えは、

…願い。

「私」は誰に願ったの?
神様へ、だった…?


愛里は幸せになるの。

この悲しみが、
ずっと今後の彼女に付いてまわるのなら…


こんな記憶、要らない。

愛里から、
「私」を…、消して。

私なんて、
初めから居なかった事にして。


――ちりん…


愛里は大切な友達。
私なんかの為に涙を流してくれた…。

私が想っている位、
愛里も私なんかを想ってくれていた事。
愛されていたという事…

それだけで、充分。


だから、どうか…


この「悲しみ」を、
愛里から消して…?



――奈央は、俺が迎えに行く…
その「心」は、
俺が救わなきゃいけない…――



あぁ…そうだった。

そうして…
私は「ここ」へ来た――…




――ちりん、ちりん…ちり…



…酷い運命だね。



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