せんぱい
女子高生
 


携帯をいじる右手に落ちた、小さな桜の花びら。

上を見上げると満開の桜。

「桜きれいだね〜」

通りすぎる人達は、みんなそう呟く。

春は好きだけど嫌い。

だって、出会いもあれば別れもあるし。

桜はきれいだけど、花が散った桜の木は、見たらなんか淋しいでしょ?

いいことがあれば、同じ分だけ悲しいことが起こりそうで。

だから、気付いたら春は好きだけど嫌いになってたんだ。



「奈都、ヤバいんだけど」

携帯の時刻は8時半になろうとしていた。

「もう8時半なりそー」

目の前で自転車をこぐ、奈都の制服の裾を引っ張った。

「え、まじで?
ちょい飛ばすから彩乃つかまっててっ!」

奈都はそう言うと、立ちこぎでスピードをあげた。

あたしはまだ新しい奈都のブレザーに、しっかりつかまった。

あたしを後ろに乗せた自転車は、桜の木の下を猛スピードで走っていく。



あたしと奈都は中学からの仲。
あかるく染めた髪に、着くずした制服と化粧で周りから浮いてるけど、そんなん気にしない。
喧嘩は多いけど、奈都といると素でいれて楽だし、一緒にいて落ち着くんだ。


そしてこの春、頭の悪いあたし達も無事、バカ高に入学することができた。


 
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop