プリンセスの条件

無意識のうちに通話ボタンを押していたらしく、翔太の声が聞こえてきた。


「そこにいるんだろ」


なぜかとても怒った顔。

モニター越しで翔太はあたしの姿なんて見えないはずなのに、ただ真っ直ぐ強い目で見つめてくる。


「早く開けろ」

「……」

「開けろって。……マイ」


最後は弱々しい声で、切なげにあたしの名前を呼んだ。


やっぱりダメだ。

あたしは、翔太のこの声に……弱い。


無言のまま、オートロックを解除。


翔太はもう一度あたしを見た後、何も言わず中に入った。


来る……

翔太がこの部屋に。


激しく加速する胸の鼓動を耳で聞きながら、少し乱れた髪を手ぐしで落ち着かせた。


「何しにきたの?」

って、冷たく言ってみようか。


それとも、

「見ちゃったよ、今日。やるじゃん!」

って茶化してみようか。


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