ホタル


抱き締める力が強まった。


息が苦しくなる程に、強く強く抱き締め合う。


もう二度と感じることはできない、あなたの体温。

お願いだから、全部全部消えないで。


傷跡でもいいから、あたしに残して。


「…子どもで、ごめん」


かすれた裕太の声が、胸元から響いた。

その言葉が全てを表していて、あたしは耐えられずに涙を流す。


「俺も朱音の罪、全部赦すよ」



…あたし達の恋は、決して赦されたものじゃなかった。

決して、認めていいものでもなかった。


だからこそあたし達は、お互いを赦した。

お互いの想いを認めあってきたからこそ、お互いの想いを赦せる。

あたし達は出会って、二人で恋をして、二人で認めあって、二人で赦しあった。


「…朱音」


これは悲恋なんかじゃない。


何一つ後悔はない。

最高に幸せな、恋だった。


それはまるで。






「…ありがとう」











忘れられない、幻の様な光。












この世界で

一番愛しいホタル。



















……………







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